薬膳とは

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<薬膳>

中国料理の底流には〈医食同源〉という考え方があり,すべての食物は薬品としての効能も併せもっているとされています。この考え方に基づき,漢方薬の素材や異なる薬効のある食物を取り合わせ,健康増進を図ろうとする食事を薬膳といいます。

 

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<起源>

中国における薬膳の歴史は、たいへん古く今から4000年以上前に書かれた「周礼」という聖典に、食医がいて王の飲食を管理し、食物によって病気の治療や予防を行っていたことが書かれています。 中国の伝統医学(中国医学)は、時代を生きた名医たちの病気と闘い続けた経験と治療成果を克明に記録した多くの医学書などが統括され、医療体系化した経験医学であり、予防医学でもあります。

 

<薬膳の基本的な考え方>

医食同源

薬食同源ともいいます。病気を治療するのも日常の食事をするのも、ともに生命を養い

健康を保つために欠くことができないもので、源は同じだという考えです。つまり、病

気を治す薬と食べ物とは、本来根源を同じくするもので あるということす。食事に注意

することが病気を予防する最善の策であること、また、日ごろの 食生活も医療に通じる

ということです。

一物全体

食べ物になる食材は、もともと一つの命(いのち)に無駄なのもなく、そのすべてが

バランスを保って存在しています。つまり生きていくうえでの必要な栄養も、全体を食べ

てこそバランスが取れると言うこと。例えば米であれば精製された白米よりは玄米を食

べた方が良い。玄米はまけば芽を出し、花を咲かせ、また種を作る生命力があります。

白米をまいても芽が出ません。野菜類にしても、皮、根、葉のそれぞれの部分に、生き

ていくための栄養をもっているのですから、丸ごと総体を食べる方がよいのです。大根な

ら、葉も大根の髭の根、皮なども食べます。そのもの全体を食べます。

 

身土不二(しんどふじ)

人間も大自然の一部。住む土地の気候や風土から切り離すことできません。自然のエネル

ギーを体内に蓄積することが、人間の体に、病気に対する抵抗力や自然治癒力を作り出

す原動力になるという考え方です。日本人は本来、農耕民族で、四季にめぐまれ、魚や

雑穀中心の生活、米、麦等を消化するのに適した身体の作りになっています。この考えだ

と、自分の住んでいる所の、その季節に摂れるもの、旬の物を食べることを心得るべきで

す。今で言うと地産地消です。

<薬膳のいろいろ>bara

薬膳という言葉は多くの人が知っていますが、本当のところは解らないと言う人が多いようです。

美味しくないとか、苦いんじゃないかと、思われているようです。食材と生薬には体を

温めたり、冷やしたり、抑制したり、血液の循環をよくするなどの効能があります。こう

した食材や生薬の効能を用いて体の健康を維持したり,老化を防止したり、疾病の予

防や治療に役立てる為の食養生が薬膳です。薬膳は必ずしも生薬を含んでいるわけ

ではありません。生薬を含めなくても食材の効能だけを考えて身体へのこれらの作用

を期待した食養生も薬膳なのです。薬膳というと、生薬を料理に混ぜるイメージを持た

れる方がいますが、これは誤解です。すべての食材には、それぞれの効能(薬効)があ

ります。食材のみで作る薬膳もありますし、食材と生薬を合わせて作る薬膳もあります。

今、日本経済新聞によると、2011年度の全国の医療費総額は37兆8000億円、

過去最高、しかも年々増え続けています。日本の平成24年度の国家予算の総額は

90兆円ですから、その40パーセントに当たります。一人でも多くの人が、カロリーや

栄養素にだけこだわるのではなくて、食材の効能をも考えた食事に気を付けて病気

にならない健康な身体つくりをしましょう。例えば、お屠蘇のこと日本には平安時代

から入ってきています。まずお正月に飲むお屠蘇があります。お屠蘇の中身は、生

薬7~8種類が入っています。これを元旦に頂くということは、今年も健康で有ります

ようにという願いがお屠蘇に込められています。唐時代の医者が、流行風邪予防の

ために作ったのが、おいしいと 流行になったのが最初のようです。なぜ、お屠蘇とい

う名前が付いたかというと、唐時代の医者が、流行風邪予防のために作ったのが、

おいしいと 流行になったのが最初らしい。この医者が住んでいた家の名前が「屠

蘇庵」といたのです。屠蘇とは、「鬼気を屠絶し人魂を蘇生させる」ということで、こ

こから、1年中の邪気を払い、延命長寿を願うために飲む酒ということになったらし

いです。屠蘇は、薬局などで売っている肉桂、大黄、百じゅつ、山椒、桔梗、乾姜

などの薬草を合せたものを、5~6時間水にひたしてから取り出し、清酒を加えて

作ります。

例えば、七草粥のこと

七草粥もそうです。七草がゆは、1月7日の人日(じんじつ)の節句に食べます。昔

は、6日年取りといって、七日を折り日として新しい年が始まると考えたため、この

日に、「1年間、外敵が来ないように」と祈ったことから始りです。七草粥は正月行

事として定着していますが、本来は1月7日の「人日(じんじつ)」の日に行われる

「人日の節句」の行事でした。七草は、せり、なずな(ぺんぺん草)、ごぎょう、はこ

べら、仏の座(田平子)、すずな、すずしろ(大根)のことです。人日とは文字通り

“人の日”という意味で、中国の前漢の時代に、元日は鶏、2日は狗(犬)、3日は猪、

4日は羊、5日は牛、6日は馬、7日は人の日としてそれぞれの占いをたて、8日に

穀を占って新年の運勢をみていたことに由来します。さらに唐の時代には、人日

の日に「七種菜羹(ななしゅさいのかん)」という7種類の若菜を入れた汁物を食べ

て、無病息災を願うようになりました。この風習が日本へ伝来し、年のはじめに若

菜を摘んで頂戴し自然界から新しい生命力をいただく「若草摘み」という日本古来

の風習と結びついて「七草粥」となり、平安時代の宮中行事として七草粥を食べる

ようになりますこの七草粥も、平安時代からの風習で、外敵は人間だけではない。

魔除けを願う気持ちの方が強かったようです。でも今では、こういった意味合いは

まったくなくなり、「おせち料理でいっぱいになった胃を休める」ために七草粥を食べる

という話が一般的になっていますね。皆さんが知らず知らずのうちに日常の生活

の中に導入されています。

 

<薬膳の理論>

 陰陽五行説:

中国思想において,陰陽論と五行説 とを組みあわせ,宇宙の生成,自然のめぐり,統

治のあり方,人体のしくみなど,宇宙 から人事にいたるあらゆる現象を説明するのに

用いられた理論です。陰陽論、古代中国では、自然界のあらゆるものを陰(いん)と陽

(よう)にわけました。たとえば、太陽は陽で月は陰、奇数が陽で偶数が陰、表が陽で

裏が陰という具合になります。時間では朝4時から12時までを陽といいます。陰は13

時から24時迄です。女性は陰(いん)で、男性は陽(よう)です。こうした思想を陰陽

思想といいます。  五行の思想は自然界は木(もく)、火(か)、土(ど)、金(ごん)、水(す

い)の5つの要素で成り立っているというものでした。五行の行という字は、巡るとか

循環するという意味があります。5つの要素が循環することによって万物が生成され

自然界が構成されていると考えられていたわけです

未病のこと:

未病とは、東洋医学(中医学)では、まだ病気にならない前のことです。今から約4千年

前の古来中国の医学書から 伝わる、予防医学の原点。 予防とケアについて知る. 早め

のケアは体の不調を病気に 進行させないだけでなく、健康な体を取り戻すきっかけにも

なります。昔は大家族で生活をしていましたが、病気の時には、祖父母がこの時はどう

すれば良いとか言って教えてくれてましたが、今は核家族でむちゃくちゃな生活をして

います。冬でも冷たい物を食べたりします。昔は母親が家族健康の医者でした。現代

の大人はお金や物の見栄えに走り、子供の食事の中身に余り関心を寄せません、子供は

添加物入りの物ばかり食べてます。だから今の子供は、いらいらしたり、すぐにきれま

す。食べ物は体をつくり、精神も養います。見かけではなく、子供の健康を考えてお弁

当を作るお母さんの子供は、悪い事はしないと、新聞に記載されていました。

食養と食療

食養とは、食材を用いて体を養う目的の食養生のことです。例えば、美肌を目的で補養作

用のある食材(手羽先、豚足、燕の巣等)を選んで食事に取り入れます…食療とは、食材

の効能により疾病を改善することです。対象は病気で体調を崩した人です。例えば、便秘

の人に、牛蒡とかカボチャなどの繊維質の食材が取り入れられます

<薬膳の心得>

五性と五味をバランスよくとりましょう

食材には五性、五味と言った性質があり、それぞれに違った働きがあります。毎日の食事

では、まず五性、五味をバランスよく摂ることが大切。その上で、自分の体調や季節に合

う食材を積極的にとり,体のバランスを整えていきましょう。また旬の食材を取り入れる

事がポイントです。夏には体を冷やす食材、冬には体を温める食材、それぞれ季節に

合った働きで体を整えてくれます。旬の野菜はおいしいてす。栄養も豊富です。 

五性には,温性、熱性、平性,寒性、涼性があります。

温性●熱性

温性、熱性は体を温める食材で、気、血の流れを良くしたり、新陳代謝を高めたりする働きがあります。冷え性の人、寒い時期や、疲れやすい人等に。主な食材は、生姜、ねぎ、にんにく、玉ねぎ、にら、しそ、よもぎ、シナモン、紅花、唐辛子、もも、くるみ、かぼちゃ、鶏肉、羊肉、さけ、アジ、エビ、餠米、酒類、紅茶、黒砂糖等。

平性

平性は、冷やしすぎず,温めすぎず、どちらでもない食材です。虚弱体質の人や病後、高齢者のひと等にも安心です。主な食材はとうもろこし、山芋、じゃがいも、きゃべつ、にんじん、黒きくらげ、クコの実、りんご、小豆、豚肉、いか、うるち米。

寒性●涼性

寒性、涼性は、体内の余分な熱を冷やし、体を冷やす食材。夏の時期、熱つぽい症状、ほてり、のぼせ等。主な食材は、きゅうり、せろり、トマト、にがうり、緑豆、なす、すいか、なし、バナナ、しじみ、豆腐、そば、緑茶、白砂糖等。

 

 五味には、酸味、苦味、甘味,辛味、かん(鹹)味(自然の塩辛さ)があります。

この五味には、それぞれ特有の働きがあります。

酸味

酸味は体を引き締めて出過ぎるものを抑制します。例えば、汗や尿など体液の過剰な流失を抑え、筋肉等を引き締めます。頻尿、多汗、下痢などの症状に。主な食材はレモン、うめぼし、酢、さんざし等。

苦味

苦味は余分な湿気や汚れを取り除く。皮膚のトラブルや便秘など主な食材は、にがうり、杏仁、ぎんなん、緑茶等。

甘味

甘味は血や栄養分や体内の気を補給し、緊張をゆるめる働きがあります。疲れているとき、痛みを和らげたい時、虚弱体質の人等。主な食材は、白米、牛乳、はちみつ、バナナ、肉類、なつめ、甘草、黒砂糖等。

辛味

辛味は体を温ためたり、気、血の流れをよくします。邪気を発散したりする働きがあり、風邪の初期、くしゃみ、鼻水や冷え症の人等主な食材は、唐辛子、生姜、こしょう、玉ねぎ,サトイモ、ねぎ。

かん味

かん味は硬いものを軟らかくする働きがあります。しこりをとったり、体を潤します。筋肉や皮膚のしこり、便秘等主な食材は、こんぶ、わかめ、のり、あさり、イカ等。薬膳を日常の食事に生かすには、こうした,食材の食性、食味を知っておくことも大切です。

 

(付)五行表

五行
五臓
五腑 小腸 大腸 膀胱
五味
五季 長夏
五色
五気 湿
五志
五根

五行学説は中国の哲学理論として生まれました。

五行学説とは、宇宙の森羅万象すべての物質は ”木・火・土・金・水“の要素に分類され、還元されるという考えです。行とは、運行という意味で五つの物質はそれぞれ交互に関連しあいながら、たえまなく動的変化をおこしていることをしめしています。これは、長い歴史や経験から生まれたものです。

木は、曲直で枝や幹が真っ直ぐになりながら上に外側に伸びて

火は、火上で、温熱、上昇、向上等立ち上がるイメージ。心の働き、循環機能を司り、意識活動を含む。体のいく特性をもちます。肝に働き自律神経系を司り新陳代謝をうながす。衰えた時に食べると、緊張がとれ疲れがとれます。食べすぎると胃の機能を弱め全身がだるくなり、むくんだりします。

土は、大地であらゆる物が取れ、食物の成長取り入れを助けます。脾の働き、消化吸収、栄養代謝を司る。体内の熱や湿気をとる、のぼせたときに、冷ます効果がある。

金は、従革で金属をしめし重く降下,急速の性質から、たやすく変化する。特性をもつ変革、冷たく、粛清、粛降,収斂のイメージ。肺の働き、呼吸器系、皮膚機能を司る。

水は、潤下(じゅんか)水は下に流れる特性。滋潤、下むき、沈下,寒涼のイメージ塩辛い味のことです。しこりを和らげ、軟化させる働きがあります。便秘やリンパ腺のはれに効果があり腎臓や膀胱や耳等のはたらきをよくします。食べすぎると心臓の気を弱め血圧があがります